脳神経科学者ハル先生が一刀両断 ― Vol.6 脳からの警告、睡眠ストレスを見逃すな!
仕事や人間関係でストレスを抱えてませんか?ストレス解消のための睡眠も、ストレスホルモンを上げてしまっては本末転倒。睡眠不足とストレスの関係を脳神経科学者ハル先生が解説。
寝不足脳はストレスホルモンを上げる!
ストレスがたまると夜、眠れないのは世界共通の話でしょう。よく寝るにはストレスにうまく対処することが必要です。しかし、寝不足そのものがストレスの原因になることを知っているでしょうか?
私たちのストレス反応というのは、脳からのストレスホルモンの分泌に始まり、連鎖反応が体内で起きて、ストレスを感じます。睡眠のストレスに対する影響を調べた研究結果は様々ですが、例えば1997年にSleep誌に投稿された論文では一晩睡眠しないだけで、翌朝ストレスホルモンが上がることが発表されています。
一晩どころではなく長期に渡って寝不足が続くと、ストレスレベルの上昇はより深刻になります。不眠症の患者さんは十分な睡眠時間をとっている人に比べて、日中を通してストレスホルモンのレベルが高いことがわかっています。また、不眠症患者の中でも、重度な患者さんほどストレスホルモンのレベルが高いことが明らかになっています。
寝不足はただでさえイライラや感情の起伏の原因となります。そこにストレスが加わると精神的に豊かな生活が損なわれてしまうかもしれません。ストレスはさらに不眠の原因となり、不眠がさらにストレスレベルを上げる、という悪いサイクルを生んでしまいます。ストレスの多い日々にこそ、夜は十分に寝てストレスを忘れてしまいたいですね。
ハル先生プロフィール:
大川 晴久
東京大学卒業。南カルフォルニア大学、神経科学 博士課程卒業。
その後、約7年間ワシントン大学にて脳神経科学者として研究に従事。
その後、製薬系の外資コンサルティング会社にて、神経系のプロジェクト担当。
現在、外資系製薬会社に勤務。中枢神経部門に属する。
引用:
- 睡眠のなぜに答える本 大川匡子、高橋清久、ライフサイエンス
- 睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー SB Creative
- Cespuglio R et al. (2005) Energy Processes Underlying the Sleep Wake Cycle; Chapter 1 in Parmeggiani & Velluti.
- Xie L et al. (2013). Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain.Science. 342 (6156): 373–377.
- Gümüştekín K et al. (2004). Effects of sleep deprivation, nicotine, and selenium on wound healing in rats. International Journal of Neuroscience. 114(11): 1433–1442
- Suka M et al. (2003) Persistent insomnia is a predictor of hypertension in Japanese male workers. J Occup Health.45(6):344-50.
- Lucey BP et al. (2019) Reduced non-rapid eye movement sleep is associated with tau pathology in early Alzheimer’s disease. Science Translational Medicine
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- Leproult R et al. (1997) Sleep loss results in an elevation of cortisol levels the next evening. Sleep. 20: 865-870.
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