脳神経科学者ハル先生が一刀両断 ― Vol.5 今日の寝不足、明日の肥満!?
寝不足脳が満腹ホルモンを抑えつける!?睡眠不足が理由で太ってしまう仕組みを脳神経科学者ハル先生が徹底解説。もう満腹ホルモンに好き勝手にはさせない!
もう満腹ホルモンに好き勝手にはさせない!
エネルギー代謝を悪くする睡眠不足。痩せられない体の原因。
実は寝不足は太る原因になることがわかっています。なぜ寝不足で太るのでしょうか?直感でわかるのは、夜更かしをすると ついつい小腹が空いてスナックなどを食べてしまうことがあるからでしょう。実際、睡眠時間が短い人は十分な人に比べて、一日の摂取カロリーを350-500キロカロリー余分に取っていると推定されています 。
夜更かしでつい食べてしまうのは、単に食べる機会が増えることだけが原因ではありません。実際に食べたくなる、つまり食欲の増加も関係しているのです。健康な人の睡眠時間を短くすると、グレリンという食欲を増すホルモンが増加し、レプチンという満腹を伝えるホルモンが減少することがわかっています。そのため我々の脳は食べたいと感じるのです。
では長く起きている分、消費エネルギーも増えるかというと、そうではありません。寝不足では日中の眠気や疲れから運動量が低下する傾向にあります。また成長ホルモンの分泌が低下し、それはエネルギー消費の低下につながる可能性があります。
寝不足はエネルギー摂取を増やすだけでなく、エネルギー消費を減らして、太る原因になるのです。ダイエット中の皆さん、よく寝たほうがダイエットにつながるっていい話だと思いませんか?
ハル先生プロフィール:
大川 晴久
東京大学卒業。南カルフォルニア大学、神経科学 博士課程卒業。
その後、約7年間ワシントン大学にて脳神経科学者として研究に従事。
その後、製薬系の外資コンサルティング会社にて、神経系のプロジェクト担当。
現在、外資系製薬会社に勤務。中枢神経部門に属する。
引用:
- 睡眠のなぜに答える本 大川匡子、高橋清久、ライフサイエンス
- 睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー SB Creative
- Cespuglio R et al. (2005) Energy Processes Underlying the Sleep Wake Cycle; Chapter 1 in Parmeggiani & Velluti.
- Xie L et al. (2013). Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain.Science. 342 (6156): 373–377.
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