睡眠による免疫系の強化ーコロナウイルスのパンデミックで考えたいこと

睡眠による免疫系の強化ーコロナウイルスのパンデミックで考えたいこと

コロナウイルス(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている中、我々の体の免疫系に及ぼす睡眠の重要性に注目が集まっています。

ウイルスや病気に対する抵抗力を高めるには、体の免疫力を高めることが大切ですが、そのためには夜にしっかりと睡眠を取ることが欠かせません。睡眠は、いわば天然の免疫促進剤と言うことができるでしょう。

このことは昔からよく知られた事実でした。風邪を引いたとき、人はたっぷり眠ることで体調を戻そうとしてきました。睡眠と免疫系の関係性は長く関心を集めてきましたが、それは現代の研究者の間にも引き継がれています。

誤解のないように断っておきますと、睡眠がコロナウイルスによって引き起こされる症状を治癒する、ということを主張しているわけではありません。残念ですが、コロナウイルスに対する有効なワクチンはまだ開発されていないのが現状です。

コロナウイルスの流行を受けて、改めて健康や免疫の働きに大きな関心が集まっています。このような時だからこそ、人間の免疫系において睡眠が果たす重要な役割について、この場を借りて少し紹介したいと思います。

 

免疫系の働き

まず、免疫系の働きについて軽くおさらいしておきましょう。免疫系とは、我々の体に自然に備わっている、病気を引き起こす細菌に対する防御システムです。

免疫系には主に3つの機能があります。

  • ウイルスや寄生虫、バクテリア、真菌など、病気を引き起こす細菌や病原体の発見及び除去
  • 体の外部から侵入する有害物質の特定及び無害化
  • がん細胞のような異常な細胞に対する攻撃

免疫系は抗原や毒素など外部から入ってきた物質に反応し、それらを除去するための特別な細胞、つまり抗体を作り出します。免疫系は、一度作り出した抗体の情報を保存しておき、同じようなトラブルが起きた際にそれを使って対処することが出来ます。水疱瘡のような病気に一度かかればそれ以降かかりにくくなるのは、免疫系の持つこの驚くべき特性によるものです。

 

睡眠が免疫系に及ぼす影響

上に見たように免疫系は非常に優れた防御機構ですが、それが有効に機能するためには睡眠が不可欠です。

免疫系をサッカーのコーチに例えると、睡眠は試合におけるハーフタイムのようなものと言えるでしょう。

優秀なコーチは、試合を通じて敵チームの特性を理解し、ハーフタイムに指示を出して味方の選手の動きを調整します。睡眠は、免疫系が体に対する脅威を見極め、適切な作戦を立てるための「ハーフタイム」なのです。睡眠という「ハーフタイム」を経ることで、免疫系は各細胞(プレイヤー)に適切な指示を出し、病気を引き起こす抗原に立ち向かうことができるのです。睡眠が不十分だと、このような調整をするための時間が足りず、病気に負けてしまうことになるでしょう。

 

睡眠によるT細胞生成の促進

睡眠は、T細胞の生成を促進することで免疫系を強化します。

T細胞とは白血球の一部であり、ウイルスに対し免疫系が機能する上で重要な役割を果たしています。ウイルスを運ぶ細胞を攻撃・破壊するという機能を持つため、体が病気と闘う上でT細胞の活性化は欠かせません。

そして、T細胞が機能するためには夜に良質な睡眠を取ることが必要なのです。

最近の研究により、夜に十分な睡眠を取った人は、そうでない人に比べて T細胞がより高いレベルで活性化した ことが分かりました。一方、睡眠時間が足りない人の場合、T細胞がウイルスに対し有効に機能することができず、体が病気と闘うための力が弱くなってしまったのです。

 

睡眠による免疫系の反応強化

体が病気と闘うためには、免疫系が抗原に対して素早く反応することが大切ですが、睡眠はここでも大きな役割を果たします。良質な睡眠が、免疫系の素早い反応を促すのです。

免疫系は、サイトカインという多機能タンパク質の助けを得て抗原に対し素早く反応することができますが、このサイトカインはレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを4回取ることで効果的に生成されます。

サイトカインには、主に二つの優先的機能があります。

  • 細胞間の情報伝達を促進 
  • 免疫細胞を抗原に誘導し対処

つまり、サイトカインはウイルスと闘うよう指示を受けた上で、免疫細胞を抗原に向かわせるという役割を果たします。

睡眠が不足すると、この一連の機能がうまく働かなくなってしまいます。我々の体は、夜に十分な睡眠をとることによって、病気と闘うための細胞やタンパク質を生成しているからです。もし睡眠が不足しているとサイトカインの生成が滞り、体がウイルスに対して十分に戦うことが出来なくなってしまいます。

 

良質な睡眠で風邪に立ち向かう

風邪を引いたとき、お医者さん(あるいはお母さんたち)はまず「睡眠を十分とるように」とアドバイスするでしょう。

このアドバイスは、多くの研究によって裏付けられています。睡眠は、風邪に対処、あるいは予防するための唯一かつ最良の方法とすら言えるかもしれません。

昨年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者たちは、風邪に対する睡眠の有効性に注目し、ウイルスに曝された際に風邪をひくかどうかを決定する最も強い因子が睡眠の質であることを明らかにしました。

同校の研究 は、被験者164名の睡眠の状況を一週間にわたり記録しました。被験者たちはその後ホテルの部屋に隔離され、風邪のウイルスを点鼻薬によって投与されました。

その結果、平均7時間以上の睡眠をとっていた被験者たちに比べて、6時間以下の睡眠しかとらなかった被験者は4.2倍の確率で風邪を引いたことが明らかになりました。

被験者が風邪にかかる確率を予測する場合には、年齢、ストレスレベル、人種、教育、所得、喫煙習慣などの他の因子よりも、睡眠の質が重要であることをこの研究は示唆しています。風邪のような日常的にかかる病気と闘う上で、いかに睡眠が重要であるかが分かります。

瞬く間に世界中に広まったコロナウイルスの脅威によって、私たちは今健康のかけがえのなさを痛感しています。睡眠は、私たちの免疫系が有効に機能し、体を健康に保つうえで大きな役割を果たしているのです。このような状況だからこそ、しっかりと 良質な睡眠を取るように心掛けることが大切です。

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